すっきり解決! 人事と経理の手続きガイド

賞与は年に何度まで支給できるのか?

 賞与は、基本的に年3回まで支給できます。年4回以上支給することは、社会保険料について特殊な計算が必要となりますので、あまりおすすめできません。

賞与から控除しなければならないものは何か?

 賞与からは、一定の控除項目を差し引いて計算します。通常の主な控除項目は次のとおりです。
 なお、「パート」「アルバイト」については、賞与を支給しないこととしている場合が多いと考えられますが、ご参考のために掲載しました。
     <通常の主な控除項目の構成>

 

 

項目

 

控除する対象者(注1) 控除した金額の扱い
役員 正社員 パート アルバイト

 

 

法定項目

 

 

雇用保険料 × × 雇用保険料は、労災保険料とあわせて年1回(6月1日〜7月10日まで、注2)、納付します。このため、従業員から徴収した雇用保険料は、会社が立替払いした保険料に充当することとなります。
健康保険料 × ×

会社負担分の社会保険料とあわせて、賞与控除した月の翌月末日に納付します。

 

厚生年金保険料 × ×
所得税 給与控除した月の翌月10日に納付します。また、パート、アルバイトの住民税は、その年1月1日に在籍していない従業員や、前年の所得が一定額以下の場合にはかかりません。
住民税 × × × × 賞与から住民税は控除しません。
任意 財形貯蓄等 財形貯蓄などを天引きをするには、労使協定が必要です。

注)

  1.  「パート」「アルバイト」の雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料の徴収の有無については、所定労働時間や雇用期間に応じて変わる場合があります。正確な適用関係については、こちらをご覧ください。
  2. 会社が納付する労働保険の概算保険料が年40万円を超えるなど一定の場合には、年3回(7月10日、10月31日、翌年1月31日)に分割して納付できます。

法定控除項目の計算方法

法定控除項目の計算方法は、次のとおりとなっています。なお、下記の控除額は、政府管掌の健康保険、厚生年金保険の場合であり、健康保険組合、厚生年金基金に加入している場合は、これと異なった計算をします。

項目 控除する金額

 

 

 

 




雇用保険料 賞与の額面金額×0.6%(注3)
健康保険料(注4)

賞与支給日の属する月の月末日で40歳以上65歳未満の場合
 標準賞与額(注5)×(10.00%(注7)+1.82%(注8))×1/2
       (50銭以下切捨、51銭以上切上)
上記以外の場合
 標準賞与額(注5)×10.00%(注7)×1/2 (50銭以下切捨、51銭以上切上)

厚生年金保険料(注4)

標準賞与額(注5)×18.3%(注6)×1/2 (50銭以下切捨、51銭以上切上)
 ただし賞与支給月の末日時点で70歳以上の場合、厚生年金保険料はかかりません

所得税

 上記雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料控除後の給料の金額に対して、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」で計算した税率を乗じて算出します。
 ただし、前月の給料の支払いがない場合や、賞与の額が前月の給料の10倍を超える場合には、特別な計算をします。

 上記の控除は、賞与に対するものです。給料から控除するものについては、こちらをご覧ください。
注)

  1.  農林水産業、清酒製造業、建設業の場合は、別の料率になります。
  2.  健康保険料と厚生年金保険料は、賞与支給日の当月末に在籍している職員についてかかります。したがって、月途中で退職する従業員に支払われた賞与については控除しません。
  3.  「標準賞与額」とは、賞与の金額の千円未満を切り捨てた金額です。ただし、健康保険料の計算の場合は年間(4月から翌年3月まで)累計額573万円、厚生年金保険料の計算の場合は賞与1回当たり上限150万円とします。
  4. 船員と坑内員は別の料率になります。
  5. 協会けんぽの健康保険料は、都道府県ごとに異なる料率となります。10.00%は、事業所が東京都にある場合の令和5年3月分からの料率となります。
  6. 介護保険料は、毎年3月に改訂されます。令和5年3月支払分の賞与から、介護保険料率が1.82%に変わりました。

 

賞与等支払届の提出

賞与を支払った場合には、その翌日から5日以内に、その被保険者について所轄年金事務所(健康保険組合に加入している場合には健康保険組合にも)に「賞与等支払届」を提出します。

届出書類 届出が必要とされる場合 提出先 提出期限 添付書類
健康保険・厚生年金保険 賞与等支払届 賞与等を支払った場合 事業所管轄の年金事務所または健康保険組合 賞与等の支払日の翌日から5日以内 賞与支払届総括票

 なお、賞与等支払届の対象者は、当月末に被保険者である者に限りますから、賞与支給月の中途に退職予定の者については、賞与を支払っても届出に記載しませんので注意しましょう。

税務上の経費とならない賞与

 次の賞与については、税務上、損金とは認められないため注意が必要です。

  1. 役員に対する賞与

    • ただし事前届出確定給与などは損金算入できます。詳細はこちらです。

  2. 利益処分による経理をした賞与
  3. 期末時点で未払いの賞与

    ただし、次のいずれかに該当すれば、未払いであっても例外的に損金算入できます。


    • 就業規則等で定められた支給予定日が当期中に到来し、かつ当期中に支給額の通知をしている賞与
    • 翌期首から1月以内に支払った賞与

      (期末日までに、各人別にかつ同時期に支給を受けるすべての従業員に支給額が通知されたものに限ります)