退職金制度は必要か
労働基準法上では、必ずしも退職金制度を導入しなければならないわけではありません。最近では、従業員のこれまでの勤務に対する退職金を支払った上で、就業規則を改定して退職金制度を廃止する企業もあります。 しかしながら、熟練労働者の育成などのため従業員を長期的に雇用したい場合には、退職金制度は有効に機能する場合も多いといえます。 なお、退職金制度には、大きく分けて基本給連動型退職金とポイント制退職金との2種類があります。
<基本給連動型退職金とポイント制退職金>
項目 |
特徴 |
メリット・デメリット |
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基本給連動型退職金 | 退職直前の基本給等に、勤続年数に応じた乗率をかけて退職金を算定します。 | 長期的に勤めれば勤めるほど、基本給も乗率も増えるため、従業員の定着を促すメリットがあります。退職直前の基本給を基礎に退職金が決まるため、毎年の昇給の結果、退職金が予想外に過大となるリスクがあります。 |
ポイント制退職金 | 勤続期間中、毎年職級等に応じてポイントを積み立て、退職時に累積ポイント数に応じた退職金を算定します。 | 基本給と無関係に退職金が決まるので、基本給の昇給の影響が退職金に及びません。 |
退職金から控除しなければならないものは何か?
退職金からは、次のとおり所得税、住民税を控除します。また「パート」「アルバイト」については、退職金が支給されるケースは少ないと思われますが、参考のために掲載しました。
項目 |
控除する対象者 |
控除した金額の扱い |
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役員 | 正社員 | パート | アルバイト | |||
法定項目
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雇用保険料 | − | − | − | − | − |
健康保険料 | − | − | − | − | 最終月分の健康保険料、厚生年金保険料であっても、退職金から社会保険料は控除できません。社会保険料は、必ず、給与から控除します。 | |
厚生年金保険料 | − | − | − | − | ||
所得税 | ○ | ○ | ○ | ○ |
退職金を支給した月の翌月10日までに納付します。 |
|
住民税 | ○ | ○ | ○ | ○ |
法定控除項目の計算方法
退職金を支給する場合には、必ず「退職所得の受給に関する申告書」を退職者に記載しておいてもらいます。この申告書を記載していない場合には、退職金から控除する所得税の税率が一律20%と高くなるからです。「退職所得の受給に関する申告書」の提出があった場合の法定控除項目の計算方法は、次のとおりです。
項目 | 控除する金額 | ||||||||||||||||||||||
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法定項目 | 所得税 |
退職所得金額=(退職金額−退職所得控除額)×1/2
税額=(退職所得金額(千円未満切捨)×税率−控除額)×102.1%
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住民税 |
1.退職金に対する住民税
上記のほか、月例給与から控除している住民税についても、未徴収の残額を一括控除します(※1) |
注)
- 具体的な控除額は次のとおりです。(ただし、退職金が未徴収の住民税残額に満たない場合は、一括控除しません)
- 1月〜4月に退職した場合:当年5月控除分までの未徴収住民税を控除します。
- 6月〜12月に退職した場合:退職者本人の了解があれば翌年5月控除分までの未徴収住民税を控除します。
退職金を支払った場合の手続き
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退職所得の受給に関する申告書の受領
- 「退職所得の受給に関する申告書」を退職者に記載してもらい、受け取ります。この申告書は、住民税の「退職所得申告書」を兼ねています。
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所得税の申告と納付
- 「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」に所定の事項を記載して退職者本人に交付します。なお、法人の役員に対して支給した場合は、もう1部税務署にも提出します。
源泉徴収された所得税は、退職金支払日の翌月10日に納付します。
- 「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」に所定の事項を記載して退職者本人に交付します。なお、法人の役員に対して支給した場合は、もう1部税務署にも提出します。
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住民税の申告と納付
- 月例の住民税の納付書の裏面に、「納入申告書」がありますので、これに記載して提出します。特別徴収された住民税は、退職金支払日の翌月10日に納付します。
「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を2部、退職者本人のその年1月1日の住所地の市町村役場へ提出します。
また、月例給与から徴収していた住民税の未徴収残額で、退職金から徴収しきれなかったものがあるときは、「特別徴収への変更依頼書」等を各市町村に送ります。
- 月例の住民税の納付書の裏面に、「納入申告書」がありますので、これに記載して提出します。特別徴収された住民税は、退職金支払日の翌月10日に納付します。
税務上の経費とならない退職金
次の役員に対する退職金については、税務上、損金とは認められないため注意が必要です。
1.役員に対する退職金で、未払経理した事業年度中に株主総会の決議をしていないもの
2.役員に対する退職金で、仮払経理した事業年度中に株主総会の決議をしていないもの
1・2とも、株主総会等で退職金の額が確定した事業年度に、損金として認められます。