従業員を採用したときの手続きは?
従業員を採用したときは、@労働基準法の手続き、A雇用保険の手続き、B社会保険の手続き、C所得税法の手続きがそれぞれあります。この手続きは、採用した従業員が正社員なのか、パートであるのか、あるいはアルバイトであるかによって変わってきます。
なお、会社を設立して初めて従業員を採用する場合には、事業所関係の手続きについても必要となります。
労働基準法の手続き(労働条件の明示)
労働契約を締結するときは、新たに採用される従業員に対して、賃金など重要な労働条件を明示しなければならないとされています。(労働基準法第15条)
主な労働条件は就業規則に記載されていますので、就業規則を定めている場合は、これを書面で渡すようにします。また「就業の場所」「従事すべき業務」などの就業規則に記載がない事項は、辞令に書いて労働者本人に渡すようにします。
明示事項の種類 |
明示事項 (緑色部分が、就業規則の記載事項) |
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書面での明示義務あり | 労働契約の期間 |
就業の場所 | |
従事すべき業務 | |
(1)始業・終業時刻、(2)休憩時間、(3)休日、(4)休暇、(5)交代制勤務の場合の就業時転換、(6)時間外労働の有無 | |
賞与等以外の(1)賃金の決定、計算及び支払の方法、(2)賃金の締切り及び支払いの時期 | |
退職に関する事項(解雇の事由を含む) | |
明示義務あり | 賞与等(臨時賃金、賞与、精勤・勤続・能率手当、奨励加給)及び最低賃金額 |
退職手当の(1)支払われる労働者の範囲、(2)決定、計算及び支払の方法、(3)支払いの時期 | |
食費、作業用品その他の負担 | |
安全衛生 | |
職業訓練 | |
災害補償及び業務外の傷病扶助 | |
表彰及び制裁 | |
休職に関する事項 |
雇用保険の手続き
従業員を採用したときは、雇用保険の被保険者となりますので、その届出手続きをします。
なお、パートやアルバイトとして採用した場合に、雇用保険の被保険者となるのは、所定労働時間が週20時間以上で、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる場合です。
届出書類 |
届出が必要とされる場合 |
提出先 |
提出期限 |
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雇用保険被保険者資格取得届 |
従業員を採用したとき(※1) | 事業所管轄の職安 | 被保険者となった月の翌月10日 |
雇用保険被保険者証再交付申請書 |
前職のある従業員を採用したときで、雇用保険被保険者証を添付できないとき | 同上 | 同上 |
※1 採用時点で年齢65歳以上の従業員は除きます(雇用保険の対象になりません)。
社会保険の手続き
従業員を採用したときは、社会保険の被保険者となりますので、その届出手続きをします。ただし、パートやアルバイトとして採用した場合には、次のいずれにも該当する者のみが社会保険の被保険者となりますので、ご注意ください。
@1日の所定労働時間数が、正社員の4分の3以上であること
A1週間の所定労働時間数が、正社員の4分の3以上であること
届出書類 | 届出が必要とされる場合 | 提出先 | 提出期限 |
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健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 |
従業員を採用したとき | 年金事務所または健康保険組合 | 採用した日から5日以内 |
健康保険被扶養者(異動)届 |
採用した従業員に被扶養者があるとき | 同上 | 同上 |
国民年金第3号被保険者資格取得届(注1) |
採用した従業員の配偶者が第3号被保険者に該当するとき | 年金事務所 | 採用した日から14日以内 |
年金手帳再交付申請書 |
従業員を採用したときで、年金手帳の提出がないとき | 同上 | 採用した日から5日以内 |
健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更届 |
従業員を採用したときで、年金手帳の氏名が実際と異なるとき | 年金事務所または健康保険組合 | 同上 |
注
- 健康保険被扶養者(異動)届の3枚目がこの届出書になっています。
所得税法の手続き
従業員を採用した場合には、「給与所得者の扶養控除申告書」を次回の給与計算までに提出してもらいます。
住民税の手続き
転職などで会社を辞めた直後に採用した従業員の場合には、直前に働いていた会社の住民税が未徴収のまま残っている場合があります。この場合、本人が、普通徴収により市町村に直接納付を希望せず、会社の給与からの天引きを希望した場合には「普通徴収から特別徴収への切替連絡書」を市町村に提出すると、特別徴収をすることができます。