繰延資産
建物を賃借する場合に支出する権利金など、その支出の効果が通常1年以上に及ぶ費用を「繰延資産」といいます。繰延資産は、少額なものを除いては、支出した事業年度の単年度経費とせず、資産として計上して数年にわたって償却していきます。
建物の権利金、敷金、礼金の取扱い
建物を賃借する際に支払った権利金や敷金・礼金などは、返還される部分と返還されない部分とに分けて、返還される部分は繰延資産として毎年償却します。
区分 | 取扱い | 償却期間 | |
---|---|---|---|
返還される部分 | 資産計上します。返還されるまで、そのままの金額となります。 | − |
|
返還されない部分 | 繰延資産として定額法により償却します。 (基通8-2-3) | 下記以外 | 5年(※1) |
権利金の額がその建物の建設費の大部分に相当し、かつ建物の存続期間中賃借できるもの | 耐用年数×70% | ||
借家権として転売できるもの |
※1 賃借期間が5年未満で、かつ更新時に再度権利金等を支払うものはその賃借期間
その他の繰延資産
上記以外でも、法人が支出した費用のうち、その支出の効果が支出日以後1年以上に及ぶもので次のものは繰延資産とされます。ただし、資産の取得に要した金額とされるべき費用及び前払費用は繰延資産となりません(法人税法施行令第14条第1項)。
ただし、下記の税法上の繰延資産のうち、支出額が20万円未満のものについては、全額、支出事業年度の損金とすることができます。
区分 | 具体的な範囲 | 償却期間 | |
---|---|---|---|
商法上の繰延資産 | 創業費、建設利息、開業費、試験研究費、開発費、新株発行費、社債発行費 | 任意償却とされているので、その事業年度に償却した金額がそのまま損金となります。 | |
社債発行差金 | 社債等の償還期間 | ||
税法上の繰延資産 | 公共的施設の設置負担金 (基通8-1-3) | 負担者が専ら使用するもの | 耐用年数×70% |
上記以外 | 耐用年数×40% | ||
共同的施設の建設費 (基通8-1-4) |
@負担者又は構成員の共同の用に供されるもの |
耐用年数×70% | |
商店街のアーケード等で一般公衆の用にも供せられるもの | 5年(※1) | ||
ノウハウの頭金等、役務の提供を受けるための権利金 (基通8-1-6) | − |
5年(※2) | |
電子計算機等の賃借に伴って支出する費用 (基通8-1-5) | − |
耐用年数×70%(※3) | |
広告宣伝用資産を贈与したことにより生ずる費用 (基通8-1-8) | − |
耐用年数×70%(上限5年) | |
同業者団体の加入金(基通8-1-11) | − |
5年 |
※1 その設備の耐用年数が5年未満の場合には、その耐用年数とします。
※2 設定期間が5年未満の場合で、更新の際に再び権利金の支出を要するものは設定期間とします。
※3 その契約上の賃借期間の方が短い場合には、その賃借期間とします。