すっきり解決! 人事と経理の手続きガイド

資本的支出と修繕費の理論的なちがい

 これまで使ってきた建物や設備に修繕を加えた場合には、原則としてその修繕費はその事業年度の費用として計上できることになります。ところが、修繕と同時に用途変更のための改装をしたり、あるいは部品をより性能の高いものに取り替えたりした場合には、資本的支出として減価償却資産の取得価額に含まれることになり、単年度で経費化できないことになります。

区分 支出の内容 取扱い

資本的支出
 (法人税法施行令第132条)

 ・固定資産の使用可能期間の延長をもたらすもの

 ・固定資産の価値増加をもたらすもの
固定資産に計上して減価償却する
修繕費  ・固定資産の通常の維持管理及び損壊した場合の原状回復費用 費用に計上する

資本的支出と修繕費との判定

  資本的支出か修繕費かの判定は、上記のような理論的な考え方だけでは、実務的に非常に難しくなります。そこで、法人税基本通達では次のような形式的な基準を定め、この基準に適合している場合にはその処理を認めることとしています。


(1) 少額又は周期の短い費用の取扱い(基通7-8-3)

基準 取扱い

1回の支出額が20万円未満であるもの

修繕費として取り扱います。

その修理、改良がおおむね3年以内の期間で、周期的に行われることが明らかである場合

修繕費として取り扱います。

いずれにも該当しない場合

 

(2) 明らかに資本的支出又は修繕費とされるものの取扱い

基準 取扱い

@ 建物の避難階段等、物理的に付加した部分

A 用途変更のための模様替え、改造、改装

B 機械の部品の高性能化、高品質化で、通常の取替え費用を超える部分の金額

資本的支出として取り扱います。(基通7-8-1)

@ 建物の解体移築(旧資材の70%以上を再利用)

A 機械装置の移設
B 地盤沈下した土地の地盛り
C 地盤沈下により海水等の浸食を受けたため行う床上げ、地上げ、移設
D 土地の水はけを良くするための砂利、砕石敷設

修繕費として取り扱います。(基通7-8-2)

いずれにも該当しない場合

 

(3) 資本的支出か修繕費かの区分が不明な金額の取扱い

基準 取扱い

 @ 1回の支出額が60万円未満の場合
 A 修理資産の前期末取得価額の概ね10%以下の支出

修繕費として取り扱います。(基通7-8-4)

 上記以外の場合で、災害で被害を受けた固定資産の場合

その金額の30%を修繕費とし、残額を資本的支出とします。(基通7-8-6)

 上記のいずれにも該当しない場合

継続適用を要件に、次のうちいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とします(基通7-8-5)
 @その金額の30%
 A修理資産の前期末取得価額の10%