すっきり解決! 人事と経理の手続きガイド

転籍出向と在籍出向のちがい

 転籍出向とは、出向元との雇用契約は終了し、出向先とのみ雇用契約を締結する場合をいいます。転籍出向の場合は、退職金も精算され、実質的には出向先への転職したのと同様です。
これに対して在籍出向とは、出向元の従業員という身分を保持したまま、出向先で働く場合をいいます。在籍出向の場合には、雇用関係が複雑になります。
 以下このページでは、在籍出向の場合について説明してまいります。

どちらの就業規則が適用されるのか

 就業規則は、事業所単位で作成し適用しますので、出向先の就業規則が適用されます(一部、出向元の規定も適用されます。)。
 このため、出向先の勤務時間が出向前より長かったり、あるいは給与が下がるなど出向者が不利益を受ける場合には、重要な労働条件の変更となりますので十分な説明と同意が必要になります。

労働保険・社会保険はどちらが負担するのか

 労災保険については、出向先が負担します。これは、出向先の事業が出向元と異なる場合、労災の発生頻度も異なり保険料率もちがうため、実際に勤務した事業所で労災の適用を受けるからです。

 

 雇用保険については、その出向者に支払う給与について、出向元と出向先とを比較し、出向先の方が多く支払っていれば出向先で加入することとなります。

 

 社会保険については、勤務時間数で判定します。出向先で正社員並みに仕事をする場合(正社員の週所定労働時間で4分の3以上で、かつ正社員の週所定労働日数の4分の3以上)には、出向先で加入します。ただし、出向元で給与の全額を支払っている場合は、社会保険も例外的に出向元で継続します。

在籍出向の場合の労災保険の手続き

  • 国内出向の場合

 

 国内出向の場合は、出向に当たっての特別な届出等の手続きはありません。
 ただし、出向元からも給与が支払われている場合には、出向先が労災保険料を計算するときに、その給与の額を加算しなければなりません。このため、出向元は出向元が支払っている給与の額を出向先に通知する必要があります。

 

  • 海外派遣の場合

 

 海外の別会社に出向させた場合、国内の労働関係法令は適用されないため、原則として現地の労働法規が適用されます。しかしながら、労災保険については派遣される従業員の不利益を避けるため、「特別加入」という制度が設けられています。(労働者災害補償保険法第33条第6,7号)

届出書類

申請できる海外派遣者

提出先

提出期限

添付書類

特別加入申請書(海外派遣者)

国内の事業主(有期事業を除く)から派遣される海外派遣者

派遣元の労働基準監督署経由して、都道府県労働局

特別加入するとき

特別加入者の氏名、希望する給付基礎日額を記載した別紙

在籍出向の場合の雇用保険の手続き

 出向者は出向先で雇用保険の被保険者の資格を取得しますので、出向元での資格喪失手続きと、出向先での資格取得手続きが必要です。
 ただし、これらの手続きは、出向者に支払う給与について、出向元の方が多い金額を支払っている場合や、出向元が給与の全額を支払っている場合には必要ありません。

届出書類

届出が必要とされる場合

提出先

提出期限

添付書類

雇用保険被保険者資格喪失届 上記のとおり 出向元を管轄する職安 出向元の最終勤務日の翌日から10日以内

雇用保険適用事業所台帳
被保険者証

雇用保険被保険者資格取得届 上記のとおり 出向先を管轄する職安 出向した月の翌月10日

雇用保険適用事業所台帳
被保険者証

在籍出向の場合の社会保険の手続き

 出向者は出向先で社会保険の被保険者の資格を取得しますので、出向元での資格喪失手続きと、出向先での資格取得手続きが必要です。
 ただし、これらの手続きは、出向者に支払う給与の全額を、出向元が支払っている場合には必要ありません。また、出向先での仕事が、パートやアルバイト程度(正社員の週所定労働時間で4分の3未満で、かつ正社員の週所定労働日数の4分の3未満)の場合も、社会保険の被保険者になりませんので、必要ありません。

届出書類

届出が必要とされる場合

提出先

提出期限

添付書類

健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届(注1)

上記のとおり

出向元管轄の年金事務所(または健康保険組合

出向元の最終勤務日の翌日から5日以内

健康保険被保険者証(被扶養者証も含む)

健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届

上記のとおり

出向先管轄の年金事務所または健康保険組合

出向した日から5日以内

年金手帳(注2)

健康保険被扶養者(異動)届

出向した従業員に被扶養者があるとき

同上

同上

在学証明書又は住民税非課税証明書その他必要書類

国民年金第3号被保険者資格取得届

出向した従業員の配偶者が第3号被保険者に該当するとき

出向先管轄の年金事務所

出向した日から14日以内

配偶者の年金手帳(注2)

  1. この届出を提出する場合で、それ以後出向元から給与が支給されなくなる場合には、社会保険料の精算が必要です。
  2. 事業主等が届書に基礎年金番号や氏名などが正しく記入されているかどうか年金手帳等と照合・確認した場合は、年金手帳の添付は不要です。